大矢研では斬新なアプローチからの「新機能ナノデバイスの創生」を目指します。
具体的に、現在はモノづくり系(実験系)の研究と、シミュレーション系の研究の2本柱で研究を進めています。
現在は、それぞれ独立していますが、将来的には、(例えば)当研究室で開発・作製したモノの上で、当研究室が開発した情報処理システムが動作することを狙っています。
日本にはものづくりに関して数多くの伝統があります。漆器,陶器,木工品などなど…。また、書に関しても伝統があり、それに伴い和紙の製造なども行われてきました。
一方で、近年ナノテクノロジーの発展によりフラーレン(C60)やグラフェンなどの「ナノカーボン材料」の開発が進みました。その中でも本研究室では、特にカーボンナノチューブ(CNT)の利用・応用を検討しています。CNTは電気特性や発光特性など優れた機能を有していることが知られています。しかしながら、現状、製品としては粉状であったり水溶液としての販売がほとんどです。
高度な応用はもちろん重要ですが「身近なところへの応用」も重要と考え、本研究室では世界で初めて「紙との融合」である「CNT複合紙(CNT複合和紙・CNT和紙)」を開発しました(左図。2007年に開発、2008年1月論文発表)。製造方法は日本伝統の和紙作製(紙漉き)プロセスを応用したものであり、これにより簡単な方法でCNT複合紙を作製可能です。
このCNT複合紙は「紙でありながらCNTの機能を有する」という大きな特徴があります。現在は、これの応用として以下のようなものを研究しています。これにより「紙なのに○○ができる!」という斬新なものが実現され、将来的には従来通りペンで書き込むことはもちろんのこと、情報処理など電子デバイス的な動作も合わせて実行できるような機能紙が作製できるかもしれません。
また、身近な素材は紙だけではなく布(糸)もあります。大矢研ではCNT複合糸(布)についても研究を進めており、複合紙と同様に糸(布)としてCNTの機能を利用できる複合材料を開発しました。製造方法は、こちらも日本の産業が得意とする染色技術を参考に糸にCNTを定着させるというものです。これにより複合糸も簡単な方法で獲得可能となっています。
応用展開が無限大のこのCNT複合紙や複合糸(布)、一緒に突き詰めてみませんか?
現在のターゲット(例としてCNT複合紙の応用展開)
CNT複合紙の導電デモンストレーション
これまでの成果(一部)
・紙なのに太陽電池(色素増感太陽電池紙) → 発電を確認!
・紙なのにトランジスタ(ペーパートランジスタ) → p型・n型の動作確認!
・人工物メトリクス認証 → 認証精度(EER)10-15達成の見通しが立った!
(1000兆回に1回しか間違えない。(cf. 指紋認証が10-7前後))
・紙なのに発熱(面状発熱紙) → 一様に発熱させられることを確認!
・紙なのに電磁波シールド → 1MHz弱~18GHz程度まで30dB以上の電磁波抑制効果を確認!
・紙なのにアンテナ → 実現可能性を見出した!
・紙なのに熱電発電 → 発電を確認!
・紙+液体+熱電発電 → 熱電発電なのに熱源不要!?(蒸散型熱電発電)
(三菱マテリアル(株)との共同研究成果)
・紙なのにアクチュエータ(ソフトアクチュエータ) → 紙が動く!
・糸なのにトランジスタ(糸トランジスタ) → p型・n型の動作確認!
・糸なのに熱電変換 → 発電&ペルチェ動作(由来と思われる応答)を確認!
・CNT+水+分散材だけ → 新規ヒドロゲルを開発!(ゲル ⇔ 液 を何度も繰り返せる!)
・フラーレン+簡単なアニール処理 → 新規のフラーレン構造体が簡単に作製できる!
(電通大との共同研究成果)
その他、続々成果報告中!
熱電発電糸デモンストレーション (クリックで動画へ ※注:14 MB) |
可逆性CNTヒドロゲル デモンストレーション (超音波照射で ゲル ⇒ 液 へ) (クリックで動画へ ※注:14 MB) |
紙アクチュエータ デモンストレーション (クリックで動画へ 約 1 MB) (都合により画質を落としてあります) |
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新規フラーレンマイクロ構造体 (柱に羽がくっついているように見える形状から"Fullerene Finned-Micropillar (FFMP)"と命名) |
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FFMPの不思議な形状(SEM像) | (提案の作製手法で)どっさり。 |
画像はSci. Rep.掲載論文より/CC BY 4.0 (一部画像改変) |
メディア等でも紹介されています!
・みなとみらい特許事務所 研究室からの最新発明紹介,2019年4月8日掲載.
・@DIME,"「カーボンナノチューブ」はスマート家電の有力な素材となるか?" 2017年10月7日掲載.
・BSフジ ガリレオX,"#93 スゴイ!和紙の底力 1300年の伝統技術とその可能性,"
2015年1月25日放送, 1月31日再放送.
(※ガリレオXの出演回はYouTubeの「ガリレオCh」でも視聴できます)
これまでにCNT系の研究については、以下の研究費補助事業・助成事業・企業よりサポートいただいております。
・(財) 横浜工業会 国際交流事業 平成19年度, 令和4年度
・(財) 住友財団 研究助成 平成19年度~平成20年度
・(財) 日揮・実吉奨学会 研究助成 平成20年度~平成21年度
・科学研究費補助金 若手研究(B)(代表) 平成20年度~平成22年度
・(株)興人 (現 KJ特殊紙(株) ⇒ 三菱製紙(株)) 平成22年度~平成23年度
・総務省SCOPE 若手ICT研究者育成型(代表) 平成23年度~平成24年度
・(一財) 鷹野学術振興財団 2019年度研究助成 令和元年度~令和2年度
・(公財) 岩谷直治記念財団 第46回研究助成 令和2年度
・三菱マテリアル(株) 産学共同研究 公募制度 令和3年度~令和5年度
・三菱マテリアル(株) 令和6年度
・(株)巴川コーポレーション 令和4年度~令和6年度
・科学研究費補助金 挑戦的研究(萌芽)(代表) 令和5年度~令和7年度(予定)
・日本製紙(株) 令和6年度~令和7年度
普段気にすることのない“自然”…。
実は、工学的には非常に興味深い挙動をしていると言うことができます。
自然界では非常に高度な「複雑構造の構築」や「情報処理」を
行っていると考えることができるのです。
自然現象をヒントにシステム設計ができたらどうでしょうか?
ポイントは「自然・生物の物理と電子デバイスの物理の対応付け」です。
これにより斬新なデバイスが生まれます。
・自然界の情報処理(Keyword: 反応拡散コンピューティング)
自然界では様々なものが相互に影響しあっています。
視点を変えると、これは情報処理をしていると考えることができます。
これは、独立している一つ一つのものが独自に処理を行いつつ
近くのものに影響を及ぼす(データのやり取りをする)ので
本質的に並列演算を行っていると考えられるということです。
もし、これをデバイスとして
簡単につくることができるとしたらどうでしょうか…?
(←迷路を解く並列演算デバイス)
反応拡散コンピューティング用回路の例とその挙動例
(ノード電圧(●-アース間)が高ければ白,低ければ黒として表示)
現在「教科書」としている自然・生物の物理現象(電子デバイス・ナノデバイス用情報処理システムの素)
粘菌の挙動 | ビリヤードボールの挙動 | ドミノ倒しの挙動 |
(https://www.jst.go.jp/pr/info /info708/) |
||
蟻の挙動 | 脳情報処理 | 確率共鳴現象 (雑音を味方につける) |
(By J.J. Collins, et al.) |
これまでの成果(一部)
・単電子粘菌回路の設計とシミュレーション → 実現可能性を見出した!
・単電子ビリヤードボールゲートの設計とシミュレーション → 実現可能性アリ!
・単電子ドミノ論理回路の設計とシミュレーション
→ 基本論理ゲートとメモリが実現可能であると見出した!
・蟻や軍隊カニの群行動模倣単電子回路の設計とシミュレーション → 実現可能性を見出した!
・脳に学ぶ単電子連想記憶回路の設計とシミュレーション
→ 16個の単電子ニューロン回路のネットワークで動作確認!
・単電子確率共鳴回路の設計とシミュレーション
→ 熱雑音、素子バラつき、回路内雑音を味方につけて動作できることを見出した!
・雑音の力を借りて信号伝搬速度が向上する見通しも得た!
・ミツバチの挙動に学ぶ単電子情報処理回路の設計とシミュレーション → 実現可能性を見出した!
・シャボン膜の挙動に学ぶ単電子情報処理回路の設計とシミュレーション → 実現可能性を見出した!
・単電子リザバーコンピューティング回路の設計とシミュレーション → 実現可能性を見出した!
・単電子メモリ対回路の設計・応用検討とシミュレーション → 実現可能性を見出した!
・魚群の挙動に学ぶ単電子情報処理回路の設計とシミュレーション → 実現可能性を見出した!
その他、続々成果報告中!
メディア等でも紹介されています!
・尾関 章, 応用物理 88(11), pp. 708-711, 2019年11月10日発行.
・日刊工業新聞 2010年10月5日号,“The 研究室.”
・日刊工業新聞 2010年9月28日号,研究紹介記事.
これまでにシミュレーション系の研究については、以下の研究費補助事業・助成事業よりサポートいただいております。
・科学研究費補助金 若手研究(B)(代表) 平成24年度~平成26年度
・科学研究費補助金 新学術領域研究(分担) 平成25年度~平成29年度
・科学研究費補助金 基盤研究(C)(代表) 平成27年度~平成29年度
・科学研究費補助金 挑戦的萌芽研究(分担) 平成28年度~平成30年度
・科学研究費補助金 基盤研究(A)(分担) 平成30年度~令和4年度
・科学研究費補助金 基盤研究(B)(代表) 平成31年度(令和元年度)~令和5年度
・(公財) 栢森情報科学振興財団 2022年度研究助成 令和4年度~令和6年度(予定)
・科学研究費補助金 基盤研究(A)(分担) 令和5年度~令和9年度(予定)
〒240-8501
横浜市保土ヶ谷区常盤台79-5
横浜国立大学 電子情報工学棟(N6-2)
305号室(研究室)/303号室(教官室)
TEL: 045-339-4119(大矢直通)
E-mail:
oya-takahide-vx[at]ynu.ac.jp